インドからの便り:2004年3月


インドからの便り

■ 2004年3月25日「子ども達の感性」

レインボーホームの池田です。

コルカタは、ここ数日30度を越える日が多くなってきました。
東京ではなごり雪が降ったそうですが、こちらではスイカやマンゴーなど夏の果物が出回り始めてきました。
ですが、まだマーケットに置かれている量は少ないですし、夏の芳醇な果物と言えるほどの物ではありません。あと2ヶ月くらい後になりそうです。

シバとラジューは毎日、久保さんのご指導の元、囲碁のトレーニングに励んでいます。
子供の囲碁は石を並べるのがとても早くて、長い時間集中して考える習慣をつけないと、しっかりした対局ができないため、久保さんはそこに重点を置いてご指導して下さっています。
この集中して考えるという事に才能を感じさせるのはアシスだそうです。
もしかすると、このまま教えていけばシバやラジューよりも強くなるかも知れません。

先日の夕食8:30頃に、子ども達はみんなキッチンに居たのですが、少し遅れて私がキッチンまでの廊下を歩いていると、アシスが外に出ようと歩いてきて、私と鉢合わせになりました。
私はみんなに隠れて外に遊びにいくつもりなのかと思い
「コラ!アシス。どこに行くんだ。みんなと一緒に食事の準備をしなさい」と言いました。
ですがアシスは「でもぉ……アンクルゥ……外に行っちゃダメ?」とモジモジします。
「外に行って何をしたいんだ?」と聞くと
「う〜ん……月だよ。……英語で言ったらムーン。ムーンが綺麗だから見たいんだ」と言いました。
「ああそおか……月かあ……アシスは月が見たいのかあ……」と何となく納得してしまいました。
私も子供の頃は星の夜空を眺めるのは好きでした。
それで
『この子には、そんなロマンチックなセンスがあるのか!?』
と、アシスの持っている生まれながらのセンスを新発見する事ができました。
もしかすると、そのようなセンスが囲碁だけでなく、様々な発送を豊かにさせる才能なのかも知れないと、思いました。

子ども達それぞれが持っている才能やセンスを、豊かに育む手助けをしていきたいと、改めて感じさせられました。

■ 2004年3月19日「ラジューも囲碁大会に」
レインボーホームの池田です。

前回、シバが日本の囲碁大会に出場する事をお伝えしましたが、今週はラジューが囲碁大会に参加する事が決まりました。
ラジューの参加する大会は、タイランドの北部 Chiangmai という所で、4月1日から5日まで開かれる《TOYOTA-DENSO WORLD GO OZA CUP 》ASIAN QUALIFYING TOURNAMENTという大会に参加します。
これは世界囲碁大会のアジア予選大会で、ベトナムや香港、マレーシアなどアジア10ヶ国の囲碁プレイヤーが参加する大会です。
この大会にインド代表として、ラジューがタイランドに行くことになりました。

ラジューとシバはいつもライバルでしたが、囲碁でもお互いに『負けじ』と頑張っていました。ですが日本の大会の参加を決める対局では、惜しくもシバに負けてしまい、出場権をシバに譲ってしまいました。
ところが、日本の大会の情報の後、堀内輝章さんの所にタイランドの情報が入ってきました。
『よっしゃ!これにはラジューを参加させるべきだ!』と堀内さんが決断して下さり「急いでラジューのパスポートを取って下さい」と、サンディープさんの所に連絡がありました。
大会は4月1日からですから、シバの6月よりも早い時期です。それだけに急いでラジューのパスポートを申請しないと、大会に参加できなくなってしまいます。
それでサンディープさんが奔走してくださり、一昨日やっとラジューのパスポートを受け取る事ができました。

毎日子ども達の囲碁指導をして下さっている久保義宏さんも、シバとラジューには集中的に時間を取ってトレーニングをして下さっています。

その久保さんから
「シバは日本に行くわけだから、日本食を食べる練習もしないといけないんじゃないですか?」と言われました。
「はあ?……食べる練習ですか?」と聞くと
「ハシの使い方ですよ。日本では手で食べられないでしょ!」そう言われると『うん!なるほど…』と納得して、一昨日からシバにハシを持たせて使い方の練習をしているのです。
ですがシバはなかなか上手く使う事ができず「アンクルゥ……難しいよぉ……スプーン使っちゃダメ?……日本料理食べなきゃないけないの?」と愚図ります。
「いいかシバ。お前はインドの代表として日本に行くんだ。インド人はマナーが良いと日本の人達に思わせる必要もある。だから頑張ってハシのトレーニングもするんだ」と説得します。
そんなやり取りを笑いながら見ているラジューが
「アンクル。タイランドではスプーンで食べて良いの?」
と聞くので、「ああ、良いんじゃないか……」と言うとラジューは嬉しそうに「シバ!頑張って食べ方練習しろよ!俺はスプーンで食べるからさっ !!…」と言って、ヘヘヘヘと笑います。
これにシバは発憤したらしく、どうにか2口摘んで口に運ぶ事ができました。

とにかく、シバとラジューは囲碁を通してインドの国境を越える事になりました。貧しい家庭に生まれて、将来に不安を抱いている環境から一転して、大人達の指導と自らの努力でチャンスをつかむ事ができたのは、日本の皆さまからのご愛好とご支援の賜物だと思います。
心から感謝すると共に、これからも無駄にする事なく、明るい未来に育つ事が出来るように、皆で努力させていただきます。

■ 2004年3月7日「皆さん、驚いて下さい!」

レインボーホームの池田です。

岡山県倉敷市におきまして、6月6日から6月10日まで、国際アマチュア碁大会(World Amateur Go Championship)が開催されるのですが、これにインド代表として、シバが参加する事が決まりました。
遅くとも6月3日に、シバは日本に行きます。
世界65ヶ国が参加する大会です。

思い起こせば2002年2月から、堀内輝章様(日本領事館領事)の呼びかけに、ボランティアをしていた木根純子さんが応えて、毎週日曜日、堀内様宅に通って囲碁を習い始めました。
始めはマラ、シバ、ラジュー、ラフール、ビクラムの5人でしたが、木根さんが毎週5人を連れて通い、ホームの中でも時間をとってはトレーニングをしていました。
私はといえば、木根さんの手伝いをしながら、子ども達から囲碁を習っていたという感じです。

子ども達に囲碁を教えるのは堀内さんと、ハルディアの三菱化学工場の工場長、西尾勝さんの2人でした。お二人ともアマ5段クラスの実力の持ち主ですから、熱心に子ども達に教えて下さいました。
そして、ハルディアの三菱化学の社員宿舎に、囲碁合宿として、泊まりがけで囲碁を教えてくださいました。2002年に2回、2003年に1回、そして今年3月5日から7日、つまり今日までの3日間、囲碁合宿をしています。

去年の8月からは、久保義宏さん、石浜義明さん(共にアマ6段)が、ホームに泊まり込みで指導してくださいました。
シバが強いとはいえ堀内さんの評価では、まだ大会に出せるほどではないという事でしたが、久保さん、石浜さんの毎日のトレーニングのおかげで、シバとラジューの実力は再び伸び始めて、どうにか大会に出て対局ができるくらいにはなりました。

そこで堀内さんが、国際囲碁連盟やデリーの囲碁クラブにも働きかけて、コルカタから選手を出場させる段取りをつけてくださいました。
それから、最終選考会としてレインボーの囲碁の出来る子供と、堀内さんの所で習っている他のインド人の皆さんと対局させる事にしました。
ホームではシバとラジューを対局させてシバが勝ちましたから、レインボー代表としてシバ。他のインド人の練習生から代表に選ばれた方と2月29日、ファイナル対局をしたところ、シバが勝ちましたので、目出度くインド代表としてシバに決める事ができました。

それからは、これも堀内さんの働きかけで、プロ2段の囲碁士、イタリア在住の重野由紀さん、アマ4段の武知ハルミさんがコルカタに駆けつけて下さいました。お二人は、西尾さんのご厚意によるハルディアの囲碁合宿で、大会での対局トレーニングをして下さっています。

シバがこの大会に出られるまでは、堀内様の呼びかけに木根さんが応えた事から始まり、西尾様、久保様、石浜様、など多くの方々のご厚意とご指導により、参加するはこびとなりました。
どの方々も、見返りが欲しくてご指導されたのではなく、子ども達の将来に繋がるためにと、熱意と愛情をもってご指導して下さいました。
感謝するばかりです。

今回のハルディア囲碁合宿には、木根純子さんも参加していますので、彼女の報告を待って、ハルディアでのトレーニング状況を、追ってご連絡いたします。
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